有限会社 豊和ボーリング 所属
山口県宇部市文京町4番46号
TEL 0836-33-2937
幸松 悟 (Koumatsu Satoru)
「ボーリングの匠」第6回は、山口県にあります、有限会社 豊和ボーリングの幸松さんをご紹介します!
今回の取材時は、宇部の大鼻地区というところで水抜きのためのボーリング(下段写真参考)をされていました。 一帯は平成6年の地すべり災害で大きな被害を受け、以降、集水ボーリング(※1)、鋼管杭(※2)、アンカーなど多くの対策工事がなされています。訪れたのはいくつかある工区のうちのひとつで、この箇所だけで55mのボーリングを7本し、そのうち2本は地質判定のため、コア採取するとのこと。
ここで大切なのは、コアがどのような状態で採取されるか?ということです。
① コアの採取率の高さ
② 採取コアの形状の良さ
③ コア箱の美しさ
どれをとっても一級品の幸松さんの仕事ぶりは、各方面より高く評価されています。
「採取率の高さ」という意味では、例えば、粘土が混じったコアでは粘土分が流出して、岩片や礫分だけが残りがちです。 しかしそれでは、正確な地質判定はできません。このような土質でも同氏のコアはきちんと原岩の状態で採取されています。
加えて、「採取コア形状の良さ」という点でも他を圧倒しており、軟岩は軟岩、岩塊・玉石は岩塊・玉石にきちんと見えるように採取されるのです。これは、後のコア判定にも大きく影響するため、非常に重要なポイントです。
また、同氏が詰めた「コア箱の美しさ」も他に類をみません。とにかく汚れが少ないということです。
後の作業工程において、同氏のコアだと半日で整理・判別・判定が済み、工程・工期の短縮になっています。
さらに、その丁寧な仕事には驚かされるばかりで、破砕帯などのコアを取った場合、まずボロボロに崩れた状態のコアが取れます。たいていはある程度、そのままコア箱に詰められることが多いのですが、可能な限り、バラバラになったコアを、まるでパズルを組み合わせるかのように並べていきます。
こうすることで、地層内がもともと、どのような状態であったか分かります。
まるでアーティストが芸術作品を作るかのような「こだわり」が伝わってきます。
コア採取の時は、ボーリングマシンの回転・圧力・水量の調整には特に気を配っています。 と幸松さん。
山口を代表する「匠」といえそうですね。
これからもお体に気をつけて頑張ってください!
記 者:これまでに特に心に残ったお仕事はございますか?
幸松さん:まだ若いころの話ですが、長崎新幹線の調査ボーリングをしていた時です。
提出した成果品(コア箱)に対して発注者から、「商品価値ゼロだな!」と怒鳴られたことがありました。この時初めて「コアが汚い」って言われたんですよ。今思えば、あまり丁寧な仕事ではなかったのかもしれません。
以降、この時言われたことが、今のコア採取における心掛けの原点になっていると思います。
記 者:本日は取材のご協力ありがとうございました!
(※1)集水ボーリング
地すべり地内に滞留してすべりを促進する地下水を速やかに排出するため、地表や、集水井・集水トンネル等の中から地山に向かって水平方向にボーリングする工法。
(※2)鋼管杭
地すべりによって移動しようとする土塊を鋼杭の剛性で引き止める工法。