有限会社 多田試錐研究所 代表取締役
北海道旭川市旭町1条11丁目688番地3
TEL 0166-54-6650
多田 政之 (Tada Masayuki)
「ボーリングの匠」第16回は、北海道にあります、多田試錐研究所の多田さんをご紹介します!
多田試錐研究所さんは、地質調査を専門とし、北海道内を中心にお仕事をされています。
昭和59年に創業されていますが、それ以前は別の会社で建設コンサルタント業をされていたそうです。
岩質はコア箱を見れば一目瞭然ですが、
そのコア箱を見ても分からない情報をボーリング日報に書き残すことが大切です。
そこには掘っている人にしか分からない出来事がたくさんあります。 と多田さん。
例えば、地すべり(※1)の地質調査では、岩質の良いところなどまずありません。
採取したコアも破砕帯(※2)を含んでいることが多いです。
ところが、破砕帯でも、逸水するものとしないものとがあります。
通常、地層の切れ目などで、大きな逸水をすれば、その個所は今後の地すべり対策をするうえで重要なデータとなります。
ところが、たまたまコアのその部分だけが局所的に破砕帯で逸水がない層であったらどうでしょう?
上記でも述べましたが、もともと設計(コンサルタント)をしていた視点からみてみますと、
ボーリング中に送り続けていた水が引いたタイミング・位置などが分かるととても助かる情報です。
設計の時に検討する地すべり対策の中身が全然違ってきますから。
と多田さん。
これからもお体に気をつけて頑張ってください!
記 者:これまでに苦労されたお仕事はございますか?
多田さん:先にも述べましたが、地すべり調査というのはほとんどが掘りにくいところなんです。
相手は地球ですから、100%完璧にいく現場などありません。日々勉強ですよ。
ただ、岩盤も軟弱地盤も何でもオールマイティーにこなすボーリング屋であることが大事と思います。
あえて苦労を挙げるとすればヒグマでしょうか。。。
北海道の熊はとにかく大きいですから。
さらに、今は保護されているのでどんどん増えています。
翌日現場へ行くと、ヒグマの足跡横の仮設足場が曲がっていたりします。
また、出会ってしまい、足元の笹で長靴が切れてしまうくらい走って逃げたこともあります。
根室・標津地域では現場まで山中を4キロ近く歩くこともあり、
そういう時はハンター同伴のボーリング作業です。
記 者:なるほど、北海道らしい苦労談ですね。
記 者:また、仕事のなかでいつも心掛けていることはございますか?
多田さん:そうですね、ちょっとしたことかもしれませんが、ボーリング作業中は必ずどこか機械に触れるようにしています。
わずかな地層の亀裂でも振動がありますし、逸水などすればゲージも振れます。
また、エンジン音にも注意深く耳を傾け、微妙なところでコアを流さないようにしています。
それと、機械はマメに手入れをすることです。
ガタのないボーリングマシンでないと、きちんとしたコアも採れません。
記 者:。本日は取材のご協力ありがとうございました!
(※1)地すべり
地すべりとは、割合ゆるい傾きの斜面で、地面が大きな塊のまま、下に向かってズルズルと動き出すこと。
地すべりの動きは通常1日に数ミリ程度のゆっくりとしたものであるが、突然数メートル動くこともある。
地面は硬さや性質の違う土や石が、いくつもの層(地層)に積み重なってできており、
その中には水を通しにくい粘土などの地層も挟まっている。
雨が降ったり、雪解け水が地面にしみ込んだりすると、その水は粘土層の上にたくさん溜まり、
粘土層を境に、上の地面が溜まった水の力で持ち上げられて、塊のままゆっくり滑りだす。
(※2)破砕帯
岩石にひび割れがたくさんできて、砕けやすくなっている地層のこと。
大きな断層(地面を作る「岩の板」が割れたりずれたりして起こる食い違い)があるところでは、
断層の動きによって周りの地面が大きな力を受けて、砕けたり、変質して粘土になったりしている。
そういう場所で起こるのが破砕帯による地すべりとなる。